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 研究の方向性

 世界中の国々が急速に高齢化に向かっていますが、日本における超高齢化社会は世界に例を見ないスピードで進行しており、65歳以上の人口が2030年には30%、2055年には40%を超えると推定されており、我が国がどのように対処していくか、世界中が注目している状況です。33 兆円を超える国の医療財政は毎年1兆円の伸びを示し、大変厳しい状況ですが、この危機的状況は逆にチャンスであり、今後、世界の多くの国が直面する同様の状況にそのノウハウを提供することができると考えています。
  人の平均的な一生は、寿命が80.9歳、健康寿命が74.5歳で死亡前 の6.4年は寝たきりなどの状態になります。 また、生涯医療費の約66%は60歳以降、約50%は70歳以降に、そして死亡1年前の終末期医療費は約20%が消費されます。しかしながら、最近の研究では長寿で医療費は増加せず、むしろ健康長寿では大幅に軽減されることが分かっています。つまり健康長寿が実現されれば、
ピンピンコロリで本人や家族のQOLが向上するばかりでなく増加する医療財政にも好影響を与えることになるのです。
 
 日本人の死因の約60%は、がん、心疾患、脳血管疾患が原因です。これらの成因には生活習慣病があり、心臓病の80%、糖尿病の90%、大腸がん・脳卒中の70%が生活習慣上の問題とされ、男性40歳肥満患者でその後の医療費は1521万円、以下、普通体重で1313 万円、痩せで1199万円となっています。また早期から糖尿病を治療しなかった場合、治療をした患者の6倍の医療費、 約5000万円が必要となります。この現状を踏まえ、渡辺光博研究室では健康長寿の実現に向けて、代謝の視点を中心にあらゆる方向性から研究を進めています。
  例えば、われわれ生物は24時間の慨日リズムを有していますが、その乱れは便利な照明器具・冷蔵庫の出現により生じ、さまざまな疾患の原因となっています。便利を否定するのではなくどのように利用していくか。またわれわれの体重の1kg以上を占める腸内細菌と各種疾患との関わり、脂質の消化吸収だけではなくさまざまなシグナル伝達分子として機能する胆汁酸の機能解明、ごきげんは長生き の秘訣のメカニズム解明、健康長寿を維持するために重要な機能性食品のエビデンス取得など、多方面のアプローチから研究を行っています。科学的根拠のある食・サプリメントの解明を行い、医食同源の観点から健康長寿を目指していき、さらにはよりよく生きるためのライフスタイルの提言も含めて行っていきたいと思っています。
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